全員に寄り添うか、個々に寄り添うか。小室哲哉からみるファッション観

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20年経っても寄り添ってくれる曲たち

 綿貫大介コラム
観月ありさ、篠原涼子、内田有紀。今や名女優の彼女たちの共通点、わかりますか? ではもう少しヒントを。安室奈美恵、鈴木亜美、hitomi、華原朋美・・・。わかりますよね。そう、みんな小室ファミリーです。拝啓、小室哲哉様。最近また、あなたが作ってきた楽曲ばかり聞いています。当時はカセットウォークマン(やがてMDへ以降)、今はiPhoneで。

哀愁を帯びたメロディライン、転調するコード進行、テクノ系のビートなど、「TKサウンド」は今の音楽シーンにある曲と比べるとちょっと懐かしい感じがするかも知れない。けど、古いという印象ではなく、むしろ20年経ってもまったく色あせていない! すごすぎる! 青春時代TK育ちの僕ですが、あの頃理解していなかった歌詞のすごさに改めて驚愕しています。なんとなくフレーズが心地よくて口ずさんでいた曲たちも改めてじっくり鑑賞すると、実はこんなことを歌わせていたなんて……とびっくりする。

例えばH Jungle With tの大ヒット曲「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」。大人になってから聞いてみると、こんなに心に寄り添ってくれる曲だったんだと感動しっぱなし。そこには変わらない毎日を、それでも懸命に生きる人間の姿がありありと描かれていて。当時金も名誉も女もなんでも手に入れていた小室さんが作ったとするとその感覚はすごすぎる。仕事に疲れて電車に乗っているとき「ほんのひとときでも自分がどれだけやったか 窓に映ってる素顔を誉めろ」とイヤホンから聞こえてきた瞬間の気持ちといったら!

次にglobeの「FACE」から。「反省は毎日で 悔やまれることが多すぎて」。うんうん、そうだよね。「青春が消えていく でも情熱はいつまでつづくの」。青春っていつまでなんだろう、まだあの頃の熱量は自分に残ってるのかな……。とまぁ、もう1行1行に自問自答です。

天才・小室哲哉は、だれにでも寄り添えるものを意識的に作っていたみたいで、“あ、これは私のことだ”とそれぞれの生活に当てはめて多くの人に受け入れられるようにした、と雑誌のインタビューで答えているのを見た。「少しくらいは きっと役には立ってる」だったら、会社員は仕事で、学生だったらクラスの中で。そんな自分を想像するだろう。

生活に寄り添えるファションは続く?

「ファッションに例えていうなら、デザイナーの主張が強いブランドはなかったからヒットしたんだと思います。みんなそれなりに着こなせる、着回しができるというか(笑)」。これもインタビューでの小室さんのコメント。思慮深い! 誰にでも似合うもの、誰の暮らしにでも寄り添えるもの。それってつまり今流行りの「スタンダード」じゃないですか! 「ライフスタイル」じゃないですか! 結果そこに行き着くのがヒットする要因なのかな。

音楽シーンは20年のうちにジャンルが細分化されて、全員ではなく個々に寄り添う時代になった。赤文字系大学生は西野カナを聞き、中2はSEKAI NO OWARIを聞き、マイルドヤンキーはEXILEを聞く。それぞれ個別の集団を作って、その中でしか盛り上がれない。

日本のファッションだって細分化することによって、個々に進化してきたように思う。お兄系、キレイめ系、ギャル系(絶滅危惧種!)、アメカジ系、スト系、モード系・・・いろんな系統の雑誌があって、その系統だけを集めたファッションビルやお店が存在していた。ただ、ファッションにおいては、決して交わることなく独自の路線を築いていたそれぞれの系統は、いつのまにかミックスされ出した。そして今では自分をジャンルで縛る人は減ってきたのかも。そして「普通」なファッションが「スタンダード」としてインフレを起こしている。

TKは今でもすごい。ただ、時代の流れでみると、やはりブームでしかなかった。スタンダードファションもブームとして去るとして、次は何がくるんだろう。また個の時代は来るのかな?(そういえば最近、カセットがまたじわじわ流行ってるよね。)

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綿貫 大介

綿貫 大介

エディター、ライター。メンズファッション誌編集者を経て、現在も編集、ライティング、ディレクションに携わる。発売中のkvina著『恋する東京 東京デートガイドブック』(京阪神エルマガジン社)巻末付録にも出てます。 いろんなアカウント:watanukinow

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